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花と緑による潤いあるまちづくりの風を吹かせたい~花の風の会~

 見る者の心を和ませてくれる花。健気に咲いた花が美しいと感じるのは、花を咲かせるまでに寒さを乗り越え根を張り、じっとその時を迎える準備をしているから。色とりどりの花だけでなく、みずみずしい葉や茎も花以上に見応えのある種類もたくさんあります。

 性別や年齢に関係なく、「花が好き」「土いじりが好き」という方もいらっしゃるでしょう。ご自宅の庭や敷地内で植栽を楽しんでいる方は少なくないと思いますが、花の風の会はこうした花や植物が大好きなメンバーが集まり、ガーデニングの知識や技術向上を目指すとともに、まちの中にも積極的に緑を取り入れたまちづくりを進めていこうと日々活動しているグループです。

活動のきっかけは?

 さかのぼること十数年前。平成11年12月に山形新幹線が新庄駅まで延伸し、最上広域交流センターゆめりあが開業しました。昔から新庄は交通の要衝として重要な役割を果たしてきましたが、それまで以前よりも格段にアクセスポイントとしての存在感が問われるようになりました。「他地域からやってくる人々の目を楽しませたい」「新庄駅で下車した方々に少しでもまち歩きを楽しんでもらいたい」という気運が新庄市全体に高まってきた時期だったかもしれません。そんな時、第19回全国都市緑化やまがたフェア「やまがた花咲かフェア’02」のメイン会場として、寒河江市と共に新庄市での開催が決まったのです。

 花咲かフェアの開催に向けて、街のあちこちで花壇の整備や植栽の手入れが始まりました。市をあげた大事業「やまがた花咲かフェア‘02」に関連したプレイベントやセミナーが開催され、市民から緑化フェアの会場ボランティアの募集も始まりました。こうしたプレイベントなどに参加した人々の間で、「もっとガーデニングの技術を学びたい!」という気持ちが高まり、結果、平成13年2月に団体を設立することとなりました。緑化フェアの1年以上前から市の事業とは別に独自に活動を展開、フェア期間中には数百名に上るボランティアたちの指導的な立場で活躍しました。現在も精力的に活動しているメンバーの杉山明美さんと早坂千恵さんにその当時のことをお聞きしました。

「花咲かフェアのプレイベントとしてコンテナ講習(寄せ植え講習)があって、その時の講師が、花の風の会の現会長栗田哲人(くりたのりと)さんだったの。とっても素敵な寄せ植えの講習を受けて、参加者の半分以上が『それだけで終わりたくない』とか『もっともっと知識や技術を身につけたい』ってことになって、それで自然にグループ結成の流れになったんじゃなかったかな。その頃はまだ、寄せ植えっていう技術が珍しくて、花を植えるって言えば一つのプランターに同じ種類の花をまとめて植えるのが主流の時代だったから、色々な種類の植物を高さや花の色、成長の特徴をいかして植える寄せ植えの醍醐味や魅力の虜になったメンバーがほとんどだったのよ。その人の個性や好みが出るし、組み合せ方によって無限に表現できる楽しさをその時に味わって感動したの。気が付いたら、活動にどっぷりはまっていて、『次は・・・』『こっちにも・・・あそこにも・・・』ってやってきたかんじ。」と杉山さん。

「みんな、土いじりが好きだから、そんなに『頑張ってやってきた!』っていう気負いはないと思うよ。自分が花や緑が好きで、やりたくてやってるんだけど、それを見てくれる人がいて、『素敵だなぁ』『きれいだなぁ』って声をかけてくれるとすごく嬉しくなるし、『もっときれいに飾って喜んでもらいたい』とか、『あなたもやってみない?』なんて誘ったりして、同じように花が好きな仲間が増えていくのは、本当にやりがいだよね。」早坂さんは仲間ができたことの喜びを語ってくださいました。

ハンギングバスケット講習会

  花の風の会の活動の中でも特に注目したいのは、「ハンギングバスケット」と呼ばれる吊り下げるタイプの鉢植えを使って、JR新庄駅周辺の飾花に取り組んでいる活動です。毎年、6月中旬から8月下旬までの約2か月間、「目で見る花のおもてなし」を実践しています。

 そもそも、ハンギングバスケットはイギリスではじまったとされる技法で、ぶら下げるタイプの容器に植物を植え付ける空間飾花の1つなのですが、都市景観から個人の庭や室内など、規模やバリエーションも豊富でどこにでも飾って楽しめるのが魅力となっています。ラティスなどを使えば壁面を利用して自由に掛け替えができ、従来の平面的な飾り方よりも、より立体的な空間演出が楽しめます。狭いスペースを有効に活用できるため玄関やほんの少しの空きスペースでも楽しめるというメリットもあります。

 しかし、花壇やプランターに植えるのとは違って、吊り下げるためにはハンギングバスケット独特の技術やコツを知らなくてはいけません。「ハンギングは素敵だなぁ」と思っても、初心者にはなかなか難易度が高いのも事実です。そこで花の風の会では、このハンギングバスケットの技術を学び花と緑の潤いある生活を楽しんでもらおうと、毎年6月頃に専門の先生をお招きし、講習会を開催しています。

 平成29年6月3日(土)、最上中央公園(通称かむてん公園)内のすぽーてぃあを会場に、今年度のハンギングバスケット講習会が行われました。公園や施設を管理している一般財団法人 新庄市体育協会が主催したもので、花の風の会は共催での開催となりました。講師は山形市白山でガーデンショップ「花のひこうき」を営む戎野日出男(えびすのひでお)先生です。戎野先生はYBCラジオ土曜朝の番組の中でも「朝の園芸」コーナーを担当しておられ、講習会当日も「先生のラジオを聞いていたら新庄で講習会があると聞き、慌てて飛び込み受付をした」という参加者もいらっしゃいました。

 戎野先生と花の風の会は、これまでの講習会を通して深い付き合いがあり、先生曰く「新庄で講習会をやるのは、花の風の会がいるからとっても楽なの、助手がたくさんいるからね。みんな弟子みたいなものだね。会のメンバーが、やらなきゃいけない段取りをみんなやってくれるから、自分としては安心して講習会ができるしすごく心強いよね。『こうした講習会に参加するのは初めて』、『ハンギングは初心者』って方がたくさんいて自分一人でフォローしなきゃいけない時だと、準備がそれなりに大変だけど、新庄は(技術や知識のある指導者が)育っているから、僕は予定が空いていればいつでも二つ返事でOKできる。」と、花の風の会のメンバーや活動に絶大の信頼を寄せていることがうかがえました。

 それもそのはず、当日はあいにくの雨模様で予定していた屋外作業ができませんでしたが、急遽館内にブルーシートを敷き詰め、できる限り施設を土で汚さないよう準備が始まりました。また、講習会で使う水ゴケの用意、軽石、土の準備も手際よくこなしていきます。ここで見かけたのが、液体洗剤や漂白剤の容器を活用した手作りの移植ベラです。特別な道具を使わなくても家庭にあるものを使ってこんな工夫ができるんだ!と、こうした目線には目からウロコの思いでした。実際に参加者に使い心地を聞いてみると、「容器は握ると軟らかいので細かなところに土を入れたい時に便利です。持ち手も手にフィットしてとても使い心地が良いですよ。自分も自宅でやってみようと思います。」と共感の感想を頂きました。

 壁に引っ掛けるタイプの容器だと上にだけ植物を植えても花がよく見えません。そのため、最近は側面にスリットが入って、そこから植物を垂らすように植え付けることができるタイプが人気のようです。

 講習会当日はスリットの入った容器をそれぞれ持参するか、持っていないという方には会のバスケットを貸し出すというフォロー、また当日参加できなくても申込んでくださった方には自宅まで花苗や必要な材料を届けるという徹底した対応ですから、戎野先生だけでなく主催者であり施設管理者でもある新庄市体育協会のスタッフも、「花の風の会の方々の機動力はすごい!とにかく手際が良くきめ細かい対応で、参加者からの反響もとても素晴らしいです。(※一般財団法人新庄市体育協会のフェイスブックに感想が掲載されています。) 参加者のニーズや要望にも臨機応変に対処できるところはもちろん、公園の植栽の管理においても色々とアドバイスも頂けるのでとても助かります。」と、良き協力者で頼れる事業パートナーだと語ってくださいました。

新庄市民プラザ園芸教室「多肉植物の寄せ植えを楽しもう」

 新庄市民プラザ主催の園芸教室は平成29年度から始まった事業で、全5回のプログラムですが、そのうち3回が花の風の会の皆さんが講師を担当しています。平成29年7月1日(土)に行われた第1回講座「多肉植物の寄せ植えを楽しもう」ではメンバーの柏倉綾子さんが講師を務めました。

 多肉植物とは葉や茎の部分に多くの水分を貯蔵している植物の総称で、見た目がぽってり・ぷくぷくとした可愛らしい種類がたくさんあります。多くはサボテンの仲間で、砂漠や海岸など乾燥地帯で生息する種が多いため、水やりの手間がほとんどかからず初心者でも育てやすい植物として観賞用に人気です。春と秋が成長期で夏と冬は休眠期だそうで、月1回程度の水やりで十分なのだそうです。講師の柏倉さんはこの多肉植物の寄せ植えが得意で、自宅で育てたサボテンの一種をはさみで切り分けながら、他の種類と組み合わせて小鉢にお手本を植えていきました。「間をあけすぎると見た目が整わないのですが、その後の成長も考えれば混み過ぎないようしたほうがいいですね。ハンギングの時と同じく、高さや色、成長のスピードなどを考えながら、バランス良く配置するのがコツです。でも窮屈になってもまた大きな鉢に植え替えればいいですから、あまり難しく考えず自分のセンスで楽しみながらやってください。」と、ピンセットを巧みに使い手際良く指導してくださいました。30名弱ほどの参加者は、花の風の会のメンバーの方々にアドバイスを頂き、30~40分程度で寄せ植えを終え、白や褐色の化粧砂を敷き詰めて作品を完成させました。

「先生の作品に比べたら不格好だけど、自分で植えたので愛着がわいて、大切に育てたいという気持ちが強くなりました。ペットみたいな感覚です。」大満足の様子でした。柏倉さんの多肉植物の寄せ植え作品は、市内の植栽でも見ることができます。

街なかの飾花で地域に貢献

 花の風の会によるまちなかの飾花は見る者の心に潤いと安らぎを与えてくれます。人が集まるスペースには、特にこうした何気ないおもてなしが必要だと気付かされます。

JR新庄駅東口アーケード通路のハンギングバスケット

 平成15年には新庄駅開業100周年にあわせて、駅前に特製のコンテナガーデンを制作するなど、結成から15年以上たっても変わらない活動は、市民だけでなく観光やビジネスで訪れる人に、まるで「ようこそ新庄へ」と話しかけているようですね。

新庄駅東口オープンガーデン「風の庭」

 やまがた花咲かフェア‘02で使われた土を再利用して作られた「風の庭」は、その名のとおり、花や緑を楽しめるだけでなく、庭の奥には手作りのテーブルなどが置かれているので、ここに足を運べば風が感じられるオープンガーデンとなっています。

南本町通り(山形銀行新庄支店前・新庄信用金庫本店前)

 本町通りにある山形銀行新庄支店前と新庄信用金庫本店前の植栽は、利用者や道行く人の目を楽しませてくれています。季節に応じて様々な植物が楽しめるほか、会のメンバーが定期的に活動している様子を目にすることができます。

 多肉植物の寄せ植えリースや山形銀行新庄支店内には会社のマスコットマーク「さくらんぼ」をモチーフにしたオブジェの展示、クリスマスシーズンには立派なリースがお目見え。これはすべて花の風の会の活動によるものです。

南東北総体2017会場の飾花

 平成29年度全国高等学校総合体育大会で、7月29日~8月3日までバドミントン競技の会場のなった新庄市体育館の玄関に、高校生たちが存分に力を発揮できるようにと応援の飾花を行いました。手作りのパーゴラ(木製の庇付き棚)にハンギングバスケットで色とりどりの花を飾り、華やかさを演出しました。若きアスリートたちが個性豊かに輝く様子を花たちも応援しているようです。

 「自分たちが好きなことやできることで、まちづくりに参加できたら・・・」

 難しく考えるより、一歩踏み出してやってみると、思っていた以上にそれは人のため、まちのためになっているということを「花の風の会」の活動が教えてくれます。精力的に活動しているメンバーの大半が女性、40代・50代・60代・70代と年齢も幅広く、「好き」が同じ仲間が集まると大きなパワーになっていくという証拠ですね。これからもたくさんの草花をまちの中に取り入れ、潤いある素敵な花の風を吹かせてほしいと感じました。

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